将軍「この砦は落ちる……お前たちは逃げろ」兵士「いえ、お供させて下さい!(本当は逃げたいっ!)」

1 : 2020/07/20(月) 22:01:12.952 ID:X//2JegW0
将軍「堅牢堅固を誇ったこのフラーク砦もここまでか……」

将軍「残るのは私だけで十分だ……お前たちは逃げろ」

兵士A「……」

兵士B「……」

兵士C「……」

兵士A(やったラッキー! 絶対逃げてやる! こんな砦と心中なんてゴメンだ!)

兵士A(だけど、いきなり『逃げます!』はちょっとまずいよなぁ……)

兵士A(まず一回断って、そしたらもう一度『逃げろ』って言ってくれるはずだから、そしたら逃げよう!)

兵士A「いえ、我らもお供させて下さい!」

2 : 2020/07/20(月) 22:03:05.739 ID:0k/UxYYna
B.C((我らも!?))
3 : 2020/07/20(月) 22:04:12.304 ID:X//2JegW0
将軍「そうか……そうしてくれるか」

兵士A(さあ、『だがお前たちを巻き込むわけにはいかぬ』と言ってくれ!)

将軍「分かった……お前たちの忠義、嬉しく思うぞ。よろしく頼む」

兵士A「えっ」

兵士B「えっ」

兵士C「えっ」

4 : 2020/07/20(月) 22:05:12.190 ID:XfesJhBXr
えっ
5 : 2020/07/20(月) 22:07:23.370 ID:X//2JegW0
将軍「ではお前たちは最後までここを守ってくれ」

将軍「私は司令室に待機しているのでな」

バタン…

兵士A「……」

兵士B「……」

兵士C「……」

兵士A(なぜだ……なぜこんなことに……。俺にはまだやりたいことが……)

兵士B「おいてめえ!」

6 : 2020/07/20(月) 22:10:56.606 ID:X//2JegW0
兵士B「なぁにやってんだよぉ!」

兵士B「せっかく逃げろって言ってくれたのにかっこつけやがってぇぇぇ!」

兵士A「ひっ!」

兵士C「しかも、勝手に『我らも』とか巻き込みやがって!」

兵士C「なんてことしやがる! 俺には妻子もいるんだぞ!」

兵士A「だ、だってしょうがないだろ……」

兵士A「『お前たちは逃げろ』『はい、そうします』ってのはさすがにさぁ……」

兵士A「ほら、よくいうじゃん? 『上司から褒美をもらう時はまず一度辞退しろ』って」

兵士B「こんな命かかってる場面で、そんな社交辞令なんざ考えんなや!」

7 : 2020/07/20(月) 22:12:46.099 ID:JJ+iPqFQ0
聞こえてそう
8 : 2020/07/20(月) 22:13:00.535 ID:Yq7XJlZZ0
将軍逃げたな
9 : 2020/07/20(月) 22:14:03.588 ID:X//2JegW0
兵士A「だったらよぉ、お前らはお前らで『俺らは逃げます』って逃げればよかっただろ!」

兵士A「なんで黙って見てたんだよぉ!」

兵士B「う……」

兵士C「ぐ……」

兵士B「だって、あの場面で『俺ら二人は逃げます』って言いにくいじゃん?」

兵士B「親方や他の職人が残業してるのに、自分だけ帰るみたいになるし……」

兵士C「あー、分かる。そんな感じ」

兵士A「お前らだって似たようなもんじゃねーか!」

10 : 2020/07/20(月) 22:17:15.508 ID:X//2JegW0
兵士A「将軍も将軍だよ……普通、部下が断っても意地でも逃がそうとするのが上官ってもんだろ」

兵士B「まったくだな」

兵士C「判断が早すぎるよなぁ」

兵士A「……どうする?」

兵士B「……」

兵士C「……」

兵士A「今からでも遅くない。『やっぱり逃げます』って言いにいこう!」

兵士B「そうだな」

兵士C「そうしよう!」

11 : 2020/07/20(月) 22:19:16.150 ID:sSXv8URtd
続けて
12 : 2020/07/20(月) 22:20:36.424 ID:X//2JegW0
将軍「……」

将軍(あ~……今になって死ぬの怖くなってきたわ)

将軍(逃げてぇ~、今からでも逃げてぇ~!)

将軍(ったく、一目散に逃げりゃいいものを、なんで俺はあんなこと言っちまったんだバカが!)

将軍(『残るのは私だけで十分だ』……じゃねーよ! かっこつけすぎなんだよぉ!)

将軍(それに部下どもも部下どもだ!)

将軍(あそこは『いえ、将軍だけお逃げ下さい。敵は我らが食い止めます』って場面だろ!)

将軍(そうすりゃ逃げられたのによ! ったく空気読めねぇよなぁ、あいつら!)

将軍(無能な部下を持つと、俺みたいな名将はホント苦労するわ!)

13 : 2020/07/20(月) 22:21:49.482 ID:XfesJhBXr
この部下にしてこの上司である
14 : 2020/07/20(月) 22:23:50.834 ID:X//2JegW0
将軍(どうする……今からでも逃げちまうか?)

将軍(さいわい、司令室には俺しか知らない隠し扉があるし……)

ガチャッ

兵士A「あ、あの……将軍」

兵士B「……」

兵士C「……」

将軍「(うおっ、ビックリした!)ど、どうした?」

将軍(もしかして、『やはり将軍だけお逃げ下さい』って言いにきたか!? やったぜ!)

15 : 2020/07/20(月) 22:26:04.942 ID:X//2JegW0
兵士A「三人で……相談したんですけど……」

将軍「うむ」

兵士A「俺ら三人……やっぱりまだ死にたくなくて……」

将軍「ん?」

兵士A「今からでも、逃げていいですか?」

兵士B「お願いします!」

兵士C「お願いします!」

将軍「……は?」

17 : 2020/07/20(月) 22:29:41.177 ID:X//2JegW0
将軍「ふざけんな、ダメに決まってんだろぉぉぉぉぉ!!!」

兵士A「え!?」

将軍「どこの軍隊に上官差し置いて逃げる部下がいるんだよぉ!」

兵士A「だ、だってさっきは……逃げろって」

将軍「あんなもんリップサービスに決まってんだろうがぁぁぁぁぁ!」

将軍「お前らみたいな下っ端は、俺みたいな偉い人の盾になるべき存在なんだよぉ!」

将軍「逃げるなんて絶対許さねえぞ!!!」

18 : 2020/07/20(月) 22:32:15.721 ID:X//2JegW0
兵士A「な、なんて奴だ……」

兵士B「今までこんなクズのために命張ってたのか……」

将軍「誰がクズだコラァ! あぁん!?」

将軍「いいか、お前らが逃げることは絶対許さん! その代わり今から俺は逃げる!」

将軍「お前らはせいぜい死ぬまでこの砦で足掻きやがれ!」

兵士A「こ、この野郎……!」

19 : 2020/07/20(月) 22:35:08.040 ID:X//2JegW0
兵士A「こうなったらお前をブッ殺してでも砦から逃げてやる!」

兵士B「おうよ!」

将軍「お、お前ら正気か!?」

将軍「上官殺しは重罪だぞ! 確実に死刑になるんだぞ!」

兵士A「どのみち、この砦にいても死ぬじゃねえか!」

兵士B「それに死人に口無し……ここでお前を殺っても、敵軍に殺されたってことになるさ」

将軍「き、貴様らぁ……!」

20 : 2020/07/20(月) 22:37:32.179 ID:X//2JegW0
兵士A「殺るぞ!」

兵士B「おう! お前も手伝え! ていうか共犯になれ!」

兵士C「あのさあ」

兵士A「なんだよ?」

兵士C「今ここにいるメンツ、全員砦から逃げたいわけじゃん? だったら全員で逃げればよくね?」

兵士B「た、たしかに……」

将軍「その通りだ……!」

21 : 2020/07/20(月) 22:39:52.606 ID:DviMIhYi0
敵「投稿せよ、そうすれば命だけは助けてやる」
22 : 2020/07/20(月) 22:40:41.458 ID:X//2JegW0
将軍「そうと決まれば時間がない! みんな、この扉から逃げるぞ!」ガチャッ

兵士A「うわっ、こんなところに扉が!」

兵士B「遠い異国にあるっていう≪カラクリヤシキ≫みたいな仕掛けだな」

将軍「ここはごく一部の人間しか知らんから、安全に逃げられる!」

兵士A「将軍バンザイ! あんた最高だよ!」

兵士B「よっ、名将!」

将軍「おだてるなよ! つか、砦落とされかけてんだから名将ではないだろ!」

アッハッハ…

23 : 2020/07/20(月) 22:43:30.718 ID:W2LL2Fo/a
流れ変わったな
24 : 2020/07/20(月) 22:43:34.443 ID:b+FaIysL0
笑ってる場合じゃないだろ
25 : 2020/07/20(月) 22:43:39.735 ID:X//2JegW0
兵士A「さ、早く――」

兵士C「……」

兵士A「どうした?」

兵士C「……」

兵士B「なにやってんだよ。急がねえと敵来るぞ!」

兵士C「考えたんだけど……俺さ、やっぱ残るわ」

兵士A「ハァ!?」

26 : 2020/07/20(月) 22:47:22.178 ID:X//2JegW0
兵士A「なんでだよ!? お前、さっき妻子いるっていったじゃん!」

兵士C「よくよく考えたらさ、俺生きて帰ってもいいことなんかないんだよね」

兵士C「妻子いるっていったけど、はっきりいって妻は鬼嫁で」

兵士C「三度のメシより俺の悪口が好き、みたいな女だし。不倫するし、メシは不味いし、すぐヒステリー起こす」

兵士C「子供は子供で立派にグレちまって、末は山賊か海賊か、みたいな奴だし」

兵士C「しかも俺の子じゃないんだよ。どう見ても不倫相手のガキ」

兵士A「うわぁ……」

兵士B「マジか……」

将軍「それは……辛いな」

兵士C「だから……俺はここでパァッと散るわ。行くならお前ら三人だけで行ってくれ」

27 : 2020/07/20(月) 22:50:45.200 ID:X//2JegW0
兵士A「じゃあ、三人だけで……」

兵士B「俺も……残る」

兵士A「お前まで!? なにいってんだよ!」

兵士B「実は俺さ、職人やってたんだけど……親方をカッとなって殺っちまったんだよね」

兵士A「なんでまた……?」

兵士B「親方の暴力や暴言に耐えられなくてさ……。見ろよ、体じゅう傷だらけ」

将軍「職人の世界は、場合によっては軍より過酷というからな……」

兵士B「しかも、俺のいた職人ギルドは親方殺しを絶対許さねえ。捕まりゃ恐ろしい制裁が待ってる」

兵士B「俺が軍に志願したのも、ギルドの手から逃れたかったってのもあるんだ」

兵士B「ここで逃げたところで、俺に未来はないし……やっぱ俺も残るわ」

28 : 2020/07/20(月) 22:52:00.619 ID:WG/0qyBMr
えらいこっちゃ
29 : 2020/07/20(月) 22:52:09.638 ID:0k/UxYYna
流れ変わったな…
30 : 2020/07/20(月) 22:53:23.818 ID:X//2JegW0
兵士A「決意は……固そうだな」

兵士B「……」

兵士C「……」

兵士A「じゃあ将軍、俺ら二人だけで――」

将軍「いや、私も残ろう」

兵士A「将軍!?」

兵士A「あんたもなにか後ろ暗い事情があったりするんですか!?」

将軍「そういうわけでもないのだが……」

31 : 2020/07/20(月) 22:56:28.038 ID:X//2JegW0
将軍「かつてここは≪フラーク平原≫という美しい平原だった」

将軍「若い頃、亡き妻とよくデートしたのもここだった」

将軍「あの頃の思い出は……今も鮮明に我が心に残っている」

兵士A「……」

将軍「その後、フラーク砦の守将に任命された時は、『この地を自分の手で守れるなんて』と喜んだものだ」

将軍「やはり、私にはみすみすこの地を敵に渡すことなどできない」

将軍「最後まで……戦おうと思う。子もおらんしな」

兵士B「てなわけだ。お前だけ逃げろ!」

兵士C「俺たちの分までしっかり生きてくれよ!」

兵士A「……」

32 : 2020/07/20(月) 22:56:59.584 ID:BDGarBdba
あれ…?ダチョウ…
33 : 2020/07/20(月) 22:57:44.905 ID:VTDmMmQp0
Aさん!
34 : 2020/07/20(月) 22:59:23.100 ID:X//2JegW0
兵士A「俺も……残る!」

兵士B「ハァ!?」

兵士C「なんでだよ!?」

将軍「我らに義理立てすることはないんだぞ」

兵士A「俺さ……生まれた時から天涯孤独で、ずっと仲間らしい仲間がいなかったんだ」

兵士B「え……」

兵士A「軍に志願したのも、死にたくなかったのも、“真の仲間に巡り合いたいから”ってのがあったからだ」

兵士A「だけど俺は……もうその夢を叶えられたような気がするよ」

兵士A「お前たちが……その“真の仲間”だ!」

兵士A「だから……残るぜ!」

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