- 1 : 2021/03/12(金) 23:19:36.58 ID:ZiugNjSJ0
『シン・エヴァ劇場版』の高クオリティを実現した、庵野秀明の巧みな経営戦略
スタッフに利益が還元されるシステム「会社のためのフィルムは面白くない」
「理解してしまったら経営者になってしまいますよ(笑)。自分がそうなったら、守りのフィルム作りになってしまう。
(サラリーマン的な)会社のためのフィルム作りって面白くないんですよ、やっぱり」(1997年刊行の『庵野秀明 パラノ・エヴァンゲリオン』より)これは、当時在籍していた株式会社ガイナックスが、『トップをねらえ!』を下請けのスタジオに丸投げしようとしていたことを非難した、
庵野秀明の言葉だ。ガイナックスの元社長が「庵野は会社を経営するということの困難さをまったく理解していない」と発言していると聞いて、冒頭のように答えている。この発言から10年後の2006年、庵野は自らが代表取締役を務める株式会社カラーを設立することになる。
2021年3月8日、延期が繰り返されてきた『シン・エヴァンゲリオン劇場版』が公開され、15年にわたる「ヱヴァンゲリヲン新劇場版」
シリーズがついに完結した。庵野秀明総監督のもと同シリーズを制作してきたスタジオカラーにとっても大きな転換点となるだろう。そこでこれを機に、過去の記事や発言をもとに庵野秀明がスタジオカラーを設立した経緯とその後の経営戦略について考えてみたい。
なおスタジオカラーという名称は、庵野秀明が代表取締役を務める株式会社カラーが作品を制作する時の通称なのだが、
本稿ではアニメの制作スタジオとして取り上げる場合はスタジオカラー、企画会社として取り上げる場合は株式会社カラーとして表記する。エヴァの成功がもたらした「危機」
庵野が会社を立ち上げようと考えたのは、2005年秋頃。「株式会社カラー 10周年記念冊子」への寄稿文で、
法務や事務の面で株式会社カラーの設立に協力した日本テレビの高橋望が、11月後半にスタジオジブリの鈴木敏夫プロデューサーから、
「庵野が会社を作るので手伝うように」との電話があったと記している。後にダイヤモンド・オンラインへの庵野自身の寄稿で明かされたが、先のテレビシリーズ『新世紀エヴァンゲリオン』
(1995~96年)および同シリーズの旧劇場版(1997、98年)のヒットにより、当時庵野が所属していた株式会社ガイナックスは
多大な利益を得たという。しかし、それに依存した安易な企画進行や社員間の給与格差などが横行する放漫な経営状態にあった。そこで庵野は『新世紀エヴァンゲリオン』を劇場作品としてリメイクするにあたり、個人事務所の設立を考え、鈴木に相談をもちかけたのだという。
同寄稿文のなかで庵野は株式会社カラーを設立した一番の理由として「製作費を管理し、スタッフ、社員への福利厚生や、
作品が当たった時の功労者への還元などをきちんと実行したかったから」と記しているが、
実は前述した『庵野秀明 パラノ・エヴァンゲリオン』の中でも、庵野は同様のことを述べている。「儲かったら、無理してやってくれたできるだけ多くのスタッフに、可能な限り利益は還元した方がいいと思うんですよ。
当たんなきゃそれまでですけど。これはある程度システム的にすでに保障されている脚本家や声優だけじゃなく、ですね。
世間の基本は経済ですから、金銭的報酬は必要だと思います」その後も同書で庵野は繰り返し、現場への利益の還元を重要視し、アニメ業界のシステムの改善を望むような発言をしている。
ガイナックスに在籍していた当時は創作活動を最優先し、経営に深く関わることを拒んでいるうちに、同社は上記のような状態になってしまったようだ。
先述の寄稿文でも、庵野は1990年代末のガイナックス在籍当時を振り返り「僕はそのころ、作品至上主義を掲げていて、経営と創作活動は二律背反すると考えていました。なので、
社員として在籍しながらも経営には関わらない形で、自分たちの作品を作ることに集中していたのです」
と記している。- 2 : 2021/03/12(金) 23:19:49.94 ID:ZiugNjSJ0
- 株式会社カラーとスタジオジブリの関係
鈴木の著書『風に吹かれて』によれば、庵野が相談をもちかけた時、なぜ人は会社を創るのか、という根本的なことを尋ねられたという。
庵野は、恩師の宮崎駿が所属するスタジオジブリに自分が目指す会社のあり方を見たのだろうか。当初のスタジオジブリは、従来のアニメスタジオ同様、企画毎にスタッフを募集し完成すると解散していた。1989年の『魔女の宅急便』の
公開後、宮崎駿監督は、プロデューサーの鈴木にスタッフを社員化して固定給制度を導入すること、新人の定期採用と育成を要求し、
安定して高品質な作品を制作できる体制を目指す。映画監督の宮崎駿氏[Photo by gettyimages]
鈴木の部下だった高橋は、こうしたスタジオジブリの会社化を、身をもって経験していた。そして庵野の作品作りへの思いと、
「スタッフに還元したい」「アニメ界に少しでも貢献したい」という信念に興味を抱き、株式会社カラー設立に協力する。当初は『新世紀エヴァンゲリオン』の権利関係の管理運用、企画開発を軸とする小規模な会社を想定していたそうだ。
「自分自身の考えを直接反映し責任を持てる」会社にしたいという庵野の意向を反映して、代表取締役となる庵野が出資を全額負担し、
取締役会もおかない、シンプルな意思決定が可能な体制とした。また会社の設立準備と並行して、ガイナックスとキングレコードを中心とした製作委員会、
そして高橋たちとの間で、『新世紀エヴァンゲリオン』の原作権関係の整理が行われた。 - 3 : 2021/03/12(金) 23:21:17.81 ID:ZiugNjSJ0
- 両社とも『新世紀エヴァンゲリオン』が庵野秀明の創作物であることは認めており、当時ガイナックスに所属し、
現在は株式会社カラー関連作品のライセンス管理を担当するグラウンドワークス:の神村靖宏と、元キングレコードの大月俊倫の協力もあって移管はスムーズに行われたという。そして庵野秀明夫人でもある漫画家の安野モヨコが、ギリシア語で歓喜を意味する「カラー」という社名を提案し、2006年5月17日、大安の日に株式会社カラーは誕生した。
目指したのは、工場ではなく「工房」
株式会社カラーの定款には「映像作品の製作および権利保有」とあるが、あくまで可能性としての提示であり、この時点でアニメスタジオの設立は想定していなかった。
当初「ヱヴァンゲリヲン新劇場版」シリーズは、『新世紀エヴァンゲリオン』を再編集した映像をベースにする予定だったので、
別のアニメスタジオを間借りする形でも十分対処できると考えていたのだ。だが実際にテレビシリーズの16ミリネガフィルムを劇場用の35ミリにブローアップしてみたところ、あまりにも粒子の荒が目立ったこと、
急速に技術が進歩したデジタル撮影による新作映像との画質の差が顕著だったことから、全編新たにデジタル撮影を行なうことになった。これを機に、あまりなじみがなかったデジタルでの制作システムを取り込んでみようと考えた庵野が、
デジタル撮影や3DCGのスタッフを募集、当時の制作プロデューサーからの助言もあり、2006年9月15日に
株式会社カラーは独自の制作スタジオを設立する。これがいわゆるスタジオカラーだ。その後、2007年の『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序』から始まる「ヱヴァンゲリヲン新劇場版」シリーズを軸に、テレビアニメ『龍の歯医者』や
PVなどの短編アニメ、webでの配信作品、実写・特撮映画の共同製作など、決して多作とは言えないが媒体やジャンルの枠を超えて
バラエティに富み、それでいて評価の高い作品を生み出してきた。スタジオカラーのこうした制作姿勢について、庵野は「カラーはむしろ工場ではなく、職人がこだわりでものづくりをする工房のままにしておきたい」と、
前述の「株式会社カラー 10周年記念冊子」のなかで語っている。均一な質の商品を大量に生産するための工場ではなく、
担当した職人たちの趣向や技量が強く反映される工房。スタジオカラーの作品を知る人であれば納得できる発言だろう。「エヴァの原作権」を活用した経営戦略
では企業としての株式会社カラーは、どのような経営戦略をとってきたのだろうか。同社の主幹事業は映像制作であり、
これまでその軸となっていたのは「ヱヴァンゲリヲン新劇場版」シリーズだ。しかし何より重要なポイントは、
株式会社カラー設立時に「エヴァンゲリオン」の原作権を保有したことにあるのではないだろうか。まずスタジオカラーを設立するにあたり、「エヴァンゲリオン」の原作権は、新規のアニメスタジオとしては強力なアドバンテージだったと思われる。
アニメスタジオの経営において、作品の権利を保有できるかどうかは重要な問題だ。従来であれば下請けとして制作費しか
受け取れないのに対して、劇場作品の興業収入をはじめ、ビデオパッケージや関連商品の売り上げからのロイヤリティなど、二次的な収益が獲得できる。だからアニメスタジオは、出資して製作委員会に参加したり、原作権を保有できるオリジナル作品の制作に取り組むが、作品が完成するまで利益を得ることはできない。
- 4 : 2021/03/12(金) 23:22:28.86 ID:ZiugNjSJ0
- その点、スタジオカラーは「ヱヴァンゲリヲン新劇場版」シリーズの制作にあたって、前シリーズからの収益を得ることができた。
『序』の制作時に、キングレコードからロイヤルティの一部を前渡しする、ミニマムギャランティを打診されたのも「エヴァンゲリオン」の実績があったからだろう。「ヱヴァンゲリヲン新劇場版」シリーズは、興行収入だけで『序』が20億円、『破』が40億円、『Q』が52億円の好成績をあげている。
それによって「エヴァンゲリオン」というブランドの価値が高まり、関連商品や各企業とのコラボレーションが広がることで、
株式会社カラーのロイヤリティ収益も増加するという好循環が生じている。原作権を保有している株式会社カラーとスタジオカラーが直結しているからこそ、こうしたヒットの恩恵を制作現場がダイレクトに受け取れる構造となっている。
しかも株式会社カラーは、「ヱヴァンゲリヲン新劇場版」シリーズでは従来の製作委員会方式を採用せず、製作資金を全額出資し、
配給・宣伝まで自社で手掛けている。いわば自主制作映画に近い製作形態だが、これは原作権保有社としての恩恵をただ甘受するだけでなく、
リターンを得る代わりにリスクも担おうという意思の表れだ。先述した庵野の「自分自身の考えを直接反映し責任を持てる」経営理念を体現しているといえるだろう。
アニメ業界に「革命」を起こすか
こうしてまとめると株式会社カラーは、いかに作品の利益を現場に還元するため、シンプルだが効果的な戦略を取っているのかがわかる。
それはかつて「新世紀エヴァンゲリオン劇場版」シリーズを作っていた頃にいら立ちを見せていたアニメ業界のシステムや、
その後放漫経営に陥ったというガイナックスを反面教師としたものだろうか。そう考えれば株式会社カラーは、旧態依然なアニメ業界のシステムを変革するための橋頭保にもみえる。
冒頭で庵野が忌避していた、経営者になれば「守りのフィルム作りになってしまう。(サラリーマン的な)会社のためのフィルム作りって面白くない」という考えは、
株式会社カラー設立後に発表した「ヱヴァンゲリヲン新劇場版」シリーズや『シン・ゴジラ』ほか一連の作品を観れば杞憂であったことは明白だ。前出の『風にふかれて』のなかで、相談を受けた鈴木が、なぜまた『エヴァ』をやるのか、新作をやればいいのに、と問うと、
庵野は「世間はそんな甘いもんじゃない」と答えたという。「ヱヴァンゲリヲン新劇場版」シリーズを終えた庵野秀明とスタジオカラーが、
アニメーションとその業界にどんな新風を巻き起こすのか、まずは今夏公開予定の『シン・ウルトラマン』を心待ちにしている。(敬称略)
- 6 : 2021/03/12(金) 23:25:04.81 ID:Gs0p3+Gr0
- まさにシン・エヴァンゲリオンにおけるシンジ君の選択やね
- 7 : 2021/03/12(金) 23:27:49.91 ID:sCJ7RbIl0
- 要するにエヴァにたかる中小企業ってだけだろ
- 27 : 2021/03/13(土) 05:16:52.71 ID:gI2z6BPL0
- >>7
バカなのかな? - 8 : 2021/03/12(金) 23:28:26.03 ID:/Htq3REM0
- 長い
- 9 : 2021/03/12(金) 23:32:00.12 ID:8aoplu4SH
- 長い
会社としてはドル箱完結させたし今後が課題 - 10 : 2021/03/12(金) 23:36:42.15 ID:retHwoPaM
- パチンコの版権として強力だから金が入ってきてただけだろ
- 11 : 2021/03/12(金) 23:41:13.76 ID:NI5K4YaP0
- トップをねらえ、のほうが面白い
- 12 : 2021/03/12(金) 23:43:21.36 ID:zHYH6VBa0
- つまりどういう事だよ
還元のシステムを分かりやすく説明しろ - 14 : 2021/03/13(土) 00:11:16.79 ID:WyivzUfy0
- 大ヒット作の権利一本でここまでやれんのかよ
- 15 : 2021/03/13(土) 00:11:47.05 ID:Pol1TT9y0
- CGを扱い始めて庵野制作のアニメはハイクオリティではなくなったが
- 22 : 2021/03/13(土) 04:43:41.24 ID:OQBHsumra
- >>15
CGダサかったな CGじゃないとこはクオリティ高かったが
日本アニメのCGでマトモなの見たことがない - 16 : 2021/03/13(土) 00:54:34.01 ID:thcTvfihp
- 不動産投資で利益出して安定した分を運用してアニメ作ってるってどっかで庵野言ってたぞ
- 17 : 2021/03/13(土) 01:40:27.82 ID:oxF7KZBQp
- 若手にカラーはカネ払いは良いけどスタッフに老害多すぎてエヴァが終わったら潰れるんじゃないかと言われてる
- 18 : 2021/03/13(土) 02:08:28.73 ID:UKweOrOt0
- CGはクソだったぞ
- 19 : 2021/03/13(土) 04:23:05.77 ID:ZriADOky0
- どうどのくらい還元したのかなんもわかんねえw
- 20 : 2021/03/13(土) 04:33:36.41 ID:aserewbi0
- 結局会社の為に嫌々エヴァ作るハメに
- 21 : 2021/03/13(土) 04:42:41.09 ID:Kq9+yHMG0
- パチとスロの版権料がでかいから
それで好き勝手できるように会社にしただけだろ
調べるのめんどいからおおよその金額だけど1台30万の10%が入ってくる
大体パチとスロで200万台売れてるはず
6000億の10%だから600億な
まじで権利関係よく移せたと思うわ - 23 : 2021/03/13(土) 05:01:44.26 ID:npISdznH0
- >>21
ガイナがもうダメになってたからな - 25 : 2021/03/13(土) 05:10:09.06 ID:RNmMqf/g0
- 「マリちゃん」大事にしろよ庵野
- 26 : 2021/03/13(土) 05:12:08.21 ID:j4cL5ndCM
- アスカ
- 28 : 2021/03/13(土) 05:21:13.02 ID:aQ5tLSGv0
- CGは本当に酷かった
そういえば、去年か一昨年ぐらいにカラーがCGスタッフの求人を出してて、嫌儲でスレが立って
シンの公開予定まで間もないのにこの時期に求人かよ、て心配がられてたわ
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