ミャンマー軍兵士、洗脳され上司の命令には絶対に逆らえない殺人マシーンと化していた…

ミャンマー国軍の偏狭な思想と実態─兵士が市民を殺せるのは、徹底的に洗脳され監視されているから
https://courrier.jp/news/archives/239878/

50万人の兵を有するといわれるミャンマー国軍は、「殺人ロボットの集団」とよく表現される。その残虐さは、2月にミャンマーの文民指導者が追放されて全国的な抗議行動が発生して以来、さらに増している。人権団体によると、4月1日時点で500人以上が殺害され、何千人もが暴行、拘禁、拷問されているという。

国連によると、3月27日にはクーデター以来最も多い100人以上が殺害され、そこには13歳の少年2人と5歳の少年を含む、7人の子供たちが含まれていた。

徹底的に洗脳される兵士たち

今回、クーデター後に脱走した2人を含む、4人の国軍将校へのインタビューを行い、60年間にわたってミャンマーを徹底的に支配してきた組織の複雑な姿が浮かび上がった。

国軍の兵士たちは、訓練キャンプに入った瞬間から、自分たちは国と宗教の守護者であり、自分たちなしには国は崩壊してしまうと教えられる。そして兵士たちは他の社会から離れて生活し、働き、人間関係を築くことによって、自分たちは国家の特権階級であり、一般市民よりもはるかに上の地位にいるというイデオロギーを身につける。

さらに、兵舎でもフェイスブック上でも、兵士はその動きを常に上官に監視されていると、将校らは語った。プロパガンダによって、街中でさえもいたるところに敵がいるような感覚を持つようになる。

その積み重ねの結果、兵士たちは、非武装の市民を56すという命令にも疑問を抱くことなく従う、硬直した世界観を持つようになる。クーデターに対して多少の不満を持つ兵士もいるものの、大規模な反発はないと将校たちは考えている。そのため、今後数日から数ヵ月の間に、さらに多くの血が流れる可能性がある。

「兵士のほとんどは洗脳されています」と名門のミャンマー国軍士官学校を卒業した大尉は言う。他2人と同様、懲罰の可能性を考慮して名前は伏せておくが、彼は現役の将校だ。

「私が国軍に入ったのは国を守るためで、国民と戦うためではありません。兵士が自国民を殺しているのを見るのは、とても悲しいことです」

将校とその家族は軍の施設に住み、その行動はすべて監視されている。クーデター以降は、ほとんどの将校は許可なしに15分以上その施設から出ることができない。

クーデター後に脱走したある将校は、「この状況は現代の奴隷制度と言っても過言ではありません」と述べた。「上司の命令は絶対です。それが正しいか正しくないかを問うことはできないのです」

1948年の独立以来、ミャンマー国軍は、共産ゲリラ、民族反乱軍、軍の弾圧でジャングルに追いやられた民主化運動家などと戦い、常に戦時体制にあった。そして、国軍のカルト的な世界においては、多数派の仏教徒ビルマ族が上位の存在とされ、多くの少数民族は何十年にもわたって軍の弾圧を受け、犠牲となってきた。

さらに、敵はビルマ族の中にも存在する。国軍の怒りの矛先は、先月のクーデターで拘束、収監された文民指導者のアウン・サン・スー・チーである。彼女の父親であるアウン・サン将軍はミャンマー国軍を創設した人物だ。

現在の国軍の敵も国内にいる。街頭での反クーデターの集会やストライキに押し寄せた何百万人もの市民こそが敵だ。

国軍記念日の3月27日には、クーデターを起こした国軍総司令官のミン・アウン・フラインが「あらゆる危険から国民を守る」と演説。戦車や行進する兵士たちが首都ネピドーで軍事パレードを行うなか、その裏では40以上の町で武力攻撃が行われ、デモ参加者やその周辺にいた人々は銃撃された。

「彼らはデモ参加者を犯罪者と見なしています。軍に従わない者、抗議する者は皆、兵士にとっては犯罪者だからです」

そうか語るのは、本紙の取材に応じた将校の1人、トゥン・ミヤット・アウンだ。

「ほとんどの兵士は、民主主義を知りません。彼らはまだ暗闇の中で生きているのです」

トゥン・ミヤット・アウンは、国軍士官学校の1年目に、ある映画を見せられたという。1988年の民主化運動を舞台に、活動家が兵士の首を切り落とす狂暴な動物のように描かれていた。だが現実に起きたことはその反対である。何千人ものデモ参加者らこそがミャンマー国軍に惨殺されたのだ。

最近のデモにおいても、ミャンマー国軍によるフェイスブックの投稿には、手製の火炎瓶で武装した暴力的なデモ隊に包囲された兵士たちの姿が映し出される。しかし、医療従事者に暴行をふるい、子供を殺し、通りがかりの市民を無理矢理、地面に押しつけて服従させているのは軍人のほうだ。