- 1 : 2023/06/23(金) 19:12:07.364 ID:UhFmQiBW0
- 「爽太さんご様子はいかがですか?」
「ああ大丈夫です。ご心配すみませんね。」
現在八六歳。
周りは殺風景を感じさせるベットが何個も並んでいる病室の端側にいる。
わたくしは、上半身を起こし看護師に診察を受けている最中だった。
そして突然病室のドアが開く音がし、音の方向に目を向けると家族が居た。
息子と息子の孫娘だ。
いつ見ても薔薇に見える、高一の孫娘さんが話しかけてくれた。
「おじいちゃんごめんね。あいつ、ここの空気が悪いから来たくないらしいの!まったく、こんな大事な事ぐらい我慢するでしょ。相変わらずバカなんだから…」
「ははは。いいよいいよ。わたしもね、昔同じ事があったもんよ。だからあの子の気持ちはよーくわかる。そういえばね、わたしの日記があってね、あの子が来るまで暇潰しで使ってくれれば…」
わたくしはベッドの横にある床頭台の上に置いてあった本を手に取って長女さんに渡した。
「おじいちゃん、これとても大切にしていたものですよね。子供の頃中々見せてくれなかったあの本を、本当に読んでいいんですか?」
「ええのよ。少々、つまんないかもしれないがな(笑)。」
そう言い日記の本を、長女さんはページを捲った。 - 2 : 2023/06/23(金) 19:13:01.399 ID:T3maK/jK0
- 長い
3文字で - 3 : 2023/06/23(金) 19:16:08.672 ID:l4AuwOms0
- >>2
86歳人生大詰め
さりとて孤独に病院暮らし
朝から晩まで妄想三昧 - 4 : 2023/06/23(金) 19:16:49.185 ID:UhFmQiBW0
- 中学生最後の日、学校のみんなで歌を歌い親に感謝の言葉を贈り、先生は感謝のプレゼントを生徒から貰っていた。
空が快晴の中、卒業式は終わり、クラスの人たちは桜が咲いている校門の前で友達と話していた。
「うぅぅ…悲しいよ。離れていても一生友達だからな…」
僕は泣く友達に言い返した。
「泣くなよ。男なんだからこんな事で泣いたら、かっこう悪いだろ。」
僕も泣きそうになったが、男の意地という奴だろうか俺は泣かなかった。
が、皆の方から目線を逸らし頬に雫がついた。
僕は雫を拭き、あるところに向かった。
小学校からの片想いの相手だ。
今日こそ伝えると自分で誓っていた。
今すぐにでも、告白しなきゃあの子に… - 5 : 2023/06/23(金) 19:17:20.659 ID:UhFmQiBW0
- 宮本 美雪。
小学校四年生の頃から一緒に帰ったり、恋愛話などイチャイチャしていた仲。
でも、結局その思いは伝えられないまま。
告白する勇気が、出せなかったのだ。
遠足の日。
研修旅行の日。
修学旅行の日。
スキーの日…色々時間はあった。
けど、それ以上に好きで好きでそして自分が怖かった。
そんな、走馬灯のように頭の中に流れながら美雪を探していた。
「見つけた。」
裏門に咲いてる満開の2本の桜の木の目の前に立っていた。
慌てて走って美雪の所に近寄ったが、そこにはもう一人いた。
その子は、僕のクラスにいた美雪と平斗だ。
そこで僕は見てしまった。
彼女の手に握手して欲しいように手を差し伸べた平斗。
お辞儀をして何か喋っていた。
この光景は、声が聞こえなくてもわかる。
僕からすれば、胸が痛くなり、呼吸が苦しくなりそうな事。
そう、告白をしていた。
美雪は平斗を見て笑って握手をしていた。
僕は唖然としながら思考停止をしていた。
時間が長く経ってるように感じたが数分しかたっていなかった。
美雪が、帰ろうとしていたので僕は美雪の所に走っていった。
桜の木のところで
「待って!」
と僕は叫んだ。
それに少し驚いたような感じで振り向いた美雪が話した。
「どうしたの爽太くん?」
僕は告白する覚悟を決めて言葉を出した。
「僕は君のことを守りたいです!だ、だから..い、一緒に..隣にいてもいいですか。」
僕は何故こんなことを言ってしまったのか。
本当の気持ちを伝えることが出来なかった。
なぜだ、なぜ「好きです」と正直に言えなかったのか。
その時、美雪は俺に手を差し伸べてきた。
「爽太くんは、いつまでも私の隣にいる人だよ!ね。」
美雪の言葉には少し驚いた。
平斗に告白されたばっかりなのに、なぜこんな事を言えるのか。
そして僕は美雪と帰ることになった。
帰ってる時に僕は問いかけた。
「ねぇ美雪。平斗はさっき君に告白でもしてたの?」
「うん…されたよ」
「え。じゃあ、付き合うことになったの?」
「私は振ったよ。」
話の途中で、間が空いた。「振った…え?」と心の中で驚いた。
僕があの時見た光景は、告白を受け入れていると思っていた。
けど、それは勘違いだった。
そのまま歩いている時美雪は言った。
「ねぇ、この空に花が咲く頃、また会いましょ!何年も何回も。」
話しているうちに美雪と帰る道が別々になる。
最後にもう一度言い直そうとした。
しかし、
「また、高校でね!じゃあね!」
と美雪がそう言い、帰る道は別れた。
「まだまだ、長そうだな(笑)。」
と僕は呟いた。
青春はこれから。
いや、コツコツと取り戻そう。
青春を。 - 6 : 2023/06/23(金) 19:18:24.307 ID:UhFmQiBW0
- 「ゴッホン…えー、皆さんこの度はご入学おめでとうございます。えー…」
校長の話が始まってる中、友達のコソコソ話が少し気になっていた。
「高校の女子、めっちゃ美人多くね!」
「それな(笑)!」
確かに、世間的から見るとここの女子は可愛い。
おっと、こんな事を思っていたら心が汚れる…いや、もうとっくにドス黒いから気づいていなかったな。
そして、始業式が終わりクラスに向かった。
クラスの周りには他人も居れば、知人もいた。
しかし、見当たらない。
そう、美雪の事だ。
辺りに探してもいなかった。
違うクラスらしい。
そして休み時間が来た。
少し校舎を探索しようと教室から出た。
そしたら、
「爽太!おっはよ!」
美雪が声をかけてきた。
「あれ?どこ行くの?」
「ちょっと校舎を探索しに。」
「ふーん、そうなんだ。じゃあ私も一緒に見に行っていい?」
笑顔で話してくる美雪に対して僕も笑顔で返してやった。
「おう!心強い味方が来て嬉しいぜ!」
「何言ってるのよ、もう(笑)。じゃあさっさと校舎をまわりに行きますか!」
美雪は高校になって少し変わった。
中学の頃に比べて、少し性格が明るくなった。
中学の時に先生から聞いたことがある。
「私のね同級生と久しぶりに集まることになったんだよ。そして居酒屋でご飯食うことになったんだけどな、一人だけ見知らぬ顔をしてるくっそチャラい奴が『おーい、ひっさしぶりやな(笑)元気にしてたか!』と声をかけてきてな『どちら様ですか』と返したら卒業アルバムを出してきて指をさしたんだよ。そしたら全くの別人で、丸眼鏡のおかっぱで影が薄い奴だったんだよ(笑)」
このような環境の違いで性格が変わるというのは、こう言う事なのかと知った。
まあでもこのように明るくなってくれて僕的にはとても安心した。
「どうしたの?そんなにニヤけて。」
「ん?いや、なんでもないよ。」
と、クスっと笑って答えた。
「あれ、ここどこだっけ。」
美雪が言ってから気がついた。
ここは何処だ?
自分の考え事に夢中で道を忘れてた。
「キーンコーンカーンコーン」
「ヤッベ、戻らないと。美雪戻るよ!」
俺は、美雪の手を無意識に握って教室の方に戻った。
そして、それぞれ教室に戻り授業が始まった。
戻る前に僕は見てしまった。
美雪が少し照れている顔を。
時が少し経ち、帰る時間の鐘がなった。
俺は席を立ち、教室を出た。 - 7 : 2023/06/23(金) 19:18:46.736 ID:UhFmQiBW0
- 「爽太〜帰ろ!」
美雪がまた声をかけてきた。
「帰るか!」
学校から少し離れるくらいまで歩いたところの歩道で話をし始めた。
「休み時間。なんかごめん。」
「べ、別に…なんとも…ううん大丈夫だよ。」
少し照れ気味な様子で美雪は話返してきた。
「それより!今度のテストどうする?」
「あ!やっべ。忘れてた。」
「あんた公英大学に行きたいんじゃないの?そのままじゃヤバいかもよ。」
「そ、そうだけど。今から勉強しろって言われても中々勉強する気になれんし。」
「じゃあ、こういうのはどう?明日、私の家でテスト勉強会を開く。どう?」
「え?めっっちゃいいなそれ!」
「でしょ〜。じゃあ、まずは君。私から直々招待をしてあげる(笑)。」
「なにそれ(笑)。まあ、誘ってくれるだけで嬉しいし、俺を友達と思い続けてくれて、ほんっとうに『ありがとう』。」
俺は満面の笑みで彼女に話した。
「べべ別に、君が大変そうだから手伝ってあげるだけだし、私の中で一番の友達だし…んんああもう、とにかく!こんな事はどうでもいいの。んん…」
美雪ははずかしがっていた。
「でもね、君と出会えて私は大きく変われたの。私は君の事を尊敬してるし、なんなら好きなくらい。」
会話の内容が最高潮になったところで分かれ道に着いた。
「じゃあ。また明日。バイバイ。」
美雪はまだ照れながらそう言い、手を振って帰って行った。
僕は先程の「好き」と言う言葉に動揺しながら手を振り、美雪は帰ってる方に向かって歩いて行った。
「また明日。」
帰り道、角の道、別れの道。
僕は道角の道路を渡ろうとした時、後ろから怒鳴り声が聞こえた。
それは、怒鳴り声にも聞こえた声だが、細かく正確に言えば声に「涙」があった。
僕の、そばには美雪が居て、そしてアスファルトが擦れる音が聞こえ、女性の声に変化した。
「ねぇ。・・花が咲いてるよ。」
視界には何もない白い世界だった。
そこには、自分と同じくらいの女性がいた。
そして、植物の芽が女性の目の前に生えていた。
女性はしゃがみ地面に手を入れ、土と植物の芽を持ち上げていた。
そこからは何も見えなかった。 - 8 : 2023/06/23(金) 19:19:32.163 ID:UhFmQiBW0
- 時が進み、俺は病院から退院することになった。
医師から聞かされた。
ちょっとしたきっかけだった。
二年前、俺は看護師に車椅子を乗せられたときに看護師の不注意で俺は車椅子に乗っけられた後、抑えがなく前に倒れた。
その瞬間頭を強打し、そして神経を刺激し、脳になんらかの影響を受けた。
これをきっかけに、俺は筋肉を動かせるようになり喋れたり体を動かせるようになった。
しかし、1年間も体を動かしていないため体の筋肉が通常よりも劣っていた。
他にも視力なども落ちていた。
そこで、1年間リハビリを行い完全といっていいほど回復した。
このような病院での大変な事があったのは約3年前、高校1年生初日の出来事だった。
俺は事故に遭ったらしく、元々は嗜眠の状態であり、普通ではずっと眠りについているはずだった。
看護師の失態で俺は起き、この世の奇跡を全て奪ったような確率で俺は生き返った。
図りかねる事で再び日常に戻った。
しかし記憶が何個か飛んでいた。
後遺症というものだろう。
そのせいで、高校、中学校、小学校の思い出の一部が欠けているような感じだった。
そんなことを、気にせず俺は大学に入るための受験勉強をした。
春の日、受験結果が出た。
そして俺は、見事に合格した。
一度我が家に帰った後、お父さんとお母さんが頬に涙を浮かべながら俺を抱きしめてくれた。
「退院おめでとう。」
そうお父さんが言ってきた。
しかし、俺は感情の表現が出来なかった。
だから、口だけで
「ありがとう」
と言った。
そして、一週間後家を出て一人暮らしのアパートに向かった。
実家から離れ、俺はまず新幹線に乗った。
新幹線で何時間も時間が経った頃、俺は東京駅で降りた。
そこで、電車に乗り替えをした。
駅を出て何分か歩いたら、俺が住むアパートが見えた。
そこでは、宅配業者が俺のアパートで引越しの仕事をしていた。
俺も少し業者さんの手伝いをした。
そして、荷物は全て俺の部屋に運ばれた。
そして部屋に、物を配置した。
ソファー、テーブル、テレビ、ベッドなど、なにも無い部屋を自分の思いのままの部屋にした。
他にも最近流行りの「DIY」で部屋の壁を木目にした。
そんな仕事をしていたら汗をかき、シャワーを浴びた。
時間は、そろそろ昼の12時になる頃だった。
俺はせっかくの新しい場所だから髪型や服装、眼鏡を変えようと思った。
メンズの美容院に行って髪型を変え、下町にある個店の服屋さんで服を買い、眼鏡屋さんで自分の度が合うメガネを選んでもらった。
そういえば、一つだけ日常で変わったこともあった。
それは、性格だ。
リハビリが終わった後でも、少ししか感情の表現を顔や言葉で表すことしかできなかった。
この影響で、俺は冷淡な性格になってしまった。
何日か経った後、大学の入学式に参加した。
大学には洋風の家や教会などの建築物があった。
そして校舎はいかにも鉄筋コンクリートのモダン建築のような大きな建物であった。
そして、集会室で入学式の会場があり、俺はそこに移動した。
大学の学長からお話があった。
「新入学生の皆さん、工英大学へようこそ!大学での生活を楽しんでください!以上。」
なぜかしら、眩しいくらい明るすぎる言い方でお出迎えしてきた。
そして、講義室へ向かい色々な説明を受けて大学の中を色々探索していた。
大学の敷地内の道を歩いている時、途中ですれ違った女性に肩がぶつかってしまった。
その女性はロングの髪型で少々陰キャっぽい女子高生の雰囲気が漂っていた。
だがファッションは現在の流行に乗っており、陰と陽な感じの方だった。
「あ、ごめんなさい。」
「こちらこそすみません…」
と言い返した。
「あぁ、初日からやらかした。」と心の中でため息をつき、髪の毛をかいた。 - 9 : 2023/06/23(金) 19:20:14.255 ID:UhFmQiBW0
- 次の日、俺は大学の講義室に居た。
後ろから少し前にある席に座った。
そうしたら隣に、女性が座ってきた。
そう、昨日ぶつかってしまった人だ。
「あ、あの…昨日ぶつかってしまいすみませんでした。」
そう声に出したら、相手から
「こちらこそ、私の不注意でした。すみません。」
話していたら授業が始まった。
授業が進んでいる中、隣の女性から声をかけられた。
「あの…いきなりですが、お名前とか聞いても?」
急に聞かれて少し動揺したが俺は答えた。
「竹本 爽太です。そちらの名前は?」
俺は質問を返した。
「私は…」
俺は名前の言葉を聞く前に鳥肌がたった。
「宮本 美雪です。お願いしますね。」
その後、授業が終わり、他の教室へ移動しようとした。
「あの!」
急に、大声ではないが声をかけられた。
「爽太さんって、私と一度か何度か会ったことがありませんか?」
この子は何を言っているのだ?
しかし、俺は過去の事故で多少の思い出が消えている。
俺が忘れてしまっているだけだろうか。
「ごめんなさい。多分会ったことは無いと思います。すみません。」
思い出せないということはやはり会ったことは無いと思う。
「こちらこそいきなりすみません。私が昔…あ…いや。昔の友達に同じ名前がいて、あ、あと、見掛けたことがあったような気がしたので、つい…」
話してる途中、時計を確認をすると授業が始まる頃だった。
「すみません、俺は授業がありますのでまた今度。」
「私も多分、同じ科目なので行きます!」
こんな会話をしながら授業の教室に向かった。
俺は、事故に遭わなければこの人について何か知っていたのだろうか?
少し残念な気持ちが浮かんだ。
こうして授業がまた始まった。 - 10 : 2023/06/23(金) 19:21:12.392 ID:UhFmQiBW0
- 授業が終わり、教科書をカバンに入れて帰宅するところだった。
その時、目の前に俺と同じくらいの年齢の男性が立っていた。
「何ですか。」
ちょっとにらみつけて、話しかけた。
「お、俺たちのサークルに入らないか。」
てっきり悪いことをされるかと思った。
そしてどの様なサークルか尋ねてみた。
「あの、サークルってどんなのですか?サークル名は?」
「えっと、名前は…自分の夢を追いかけサークルだ!」
なんだそのダサい名前は。
だが、なんとなく面白くも感じた。
「それでどんなことをするのですか?あの~その~…」
「自分の夢を追いかけサークル。」
「そうそれです。」
「んーここはね、自分が叶えたい目標や夢。そのためにいろんなことに挑戦できる所で、俺らのサークルは学長からの直々の支援があるんよ!だから、お金もいっぱいあってすっごくいろんなことができるんだぜ!」
意外とまともなサークルで内心驚いた。
普通にすごく良さげなサークルだが、学長が関わっている事になにか引っ掛かりがあった。
でもその反面、このサークルに興味が湧いた。
「じゃあ、いいですよ。入ります。」
「あざっす!!」
しかし、疑問があった。
「でも、なんで俺なんかを誘ったんですか?」
「俺がお前を見つけたらさ、さっき入部してきた奴とめっちゃ似合ってたから誘ったんだ(笑)。」
「えぇ…そんなことでですか。」
少し呆れた。
理由がばからしい。
まぁいい、いろんなことに挑戦ができるなら何でもいい。
「俺は樋 康太。よろしく!」
手を差し伸べてきた。
「こちらこそ。俺は竹本 爽太です。よろしく。」
そして、俺はそのサークル部員に付いていった。
部員と廊下を歩いている時、部員が問いかけてきた。
「なぁ、連絡でも交換しないか?」
「え?まぁ、はい。わかりました。」
相変わらず素っ気なく返事を返して、携帯電話を出した。
アプリを開きQRコードの画面にした。
先輩は、俺のQRコードを読み取り友だち登録をした。
「ありがとな!」
そして部室に着き、ドアを開けた。
中は意外とイメージ通りだった。
いろんな紙が貼られていたり散らばっていたりしていた。
「うぃーっす」
俺を連れてきた男性は扉を開け皆に挨拶をした。 - 11 : 2023/06/23(金) 19:21:23.991 ID:l4AuwOms0
- 晩年の孤独感に耐え兼ねた老人が日記という名目で怪文書をつくり、それを空想の孫娘に読んでもらうという脳内自己完結型家庭系物語
- 12 : 2023/06/23(金) 19:21:43.168 ID:UhFmQiBW0
- 部屋には、女性が三人、奥の方に一人の男性が居た。
「こんちゃー」
女性の一人がまるでギャルっぽい言い方で返事をしてきた。
「今日から入部する、竹本 爽太だ。仲良くしてやれよ。」
「よろしくお願いします。」
笑顔も出さず、声も普通に、ただ感情のない挨拶をした。
「よろしくねー。あ、あと君と同じ代の、あの子も入部してきた子。」
先程のギャルっぽい人が何回も見た事がある人を紹介していた。
そう、美雪さんだ。
「み、宮本 美雪です。お願いします。」
と、挨拶が終わったら他の皆様方の名前を教えてもらった。
「私は浜宮穂香(はまみや ほのか)でーす。お願いしまーす。」
先程のギャルっぽい人だが、服装などの身だしはちゃんとしており、ファッションも流行りにちゃんと乗っている、イメージに少し合わない人。
「俺は樋 康太(とい こうた)。よろしく!」
ツーブロックの髪型をして体型も良い、元体育系男子のようなやつ。そして俺をこのサークルに誘ってきた人。
「私は、渡辺 優花(わたなべ ゆうか)。よろしく。」
なんというか、いわゆる「氷姫」のような冷たい人で、それにこの人こそまさに「清楚」という感じを漂う人だった。
「僕は言森 栄斗(こともり えいと)。よろしく。」
優花さんと同じように冷淡、そして眼鏡をかけているが、なにか違うオーラが漂う、クール系男子だった。
「一応俺らは、君たちの一つ上の先輩です。これからもよろしくな!」
最後に樋さんが説明して、終わった。
それにしてもあいさつで、なんとなくどんな性格かがわかりやすい人たちだった。
「じゃあ、新入生二人組はどんなことをする?」
言森先輩は言った。
確かに、いざ言われると何をするかは少々戸惑う。
まぁ、自分の夢がまだ決まっていないわけだし…
「じゃあ、俺は自分の将来の仕事について何か見つけたいので、それについて色々と探求していきます。」
「…いいんじゃない。」
言森先輩は言った。
「じゃあ私は、探したい人を探したいです。」
「??」
驚いた。
確かに色々なことができる所だが、そんなこともできるのか?
「まじか…」
先輩方は戸惑っているように見えた。
さすがに、無理に決まっていると思った。
「めっっっっっちゃいいじゃん。それ!」
二人が一斉に叫んだ。
そして、美雪はその反応に戸惑い、言森先輩と渡辺先輩は静かにしていた。
「はぁ~…」
俺はため息をついた。
皆のテンションが高すぎて俺はこのサークルに向いてないと感じた。
「爽太さん。頑張ろうね!」
だが、俺は美雪の言葉を聞き、またため息をして、「そうだな。」と返した。
そして、樋先輩に一つ話をした。
「浜宮先輩って結構美人なんですね。性格はあまり好きではないですけど。」
「…好きなの(笑)?」
「ちがいます…」
そう話して皆は帰った。 - 13 : 2023/06/23(金) 19:22:46.274 ID:UhFmQiBW0
- 次の日の講義が終わった後、俺たちはまたサークルの部屋に行った。
そして、皆は作業に移った。
皆は、作業に取り組んでいる。
しかし、俺は中々取り組めない。
色々、考えた結果、俺は図書室に行くことにした。
「ねぇ、どこいくの?」
美雪は、そんなことを言いながら俺についてきた。
「別に。俺は図書室で調べものをしようとしてるだけですけど。」
「じゃあ私も、図書室で調べものしに行きます!」
なぜかしら、嬉しそうに話してくる。
もしかしたら、俺に気でもあるのか?
いや、さすがに出会ったばかりだし、ありえない。
俺はあまり興味が…無いことはない。
別にこの人は色々と外見が…まあ好みではないし、でもなんかなぁ〜…なんかこいつの性格が面白くて…んんあーー!…
頭がこんがらがっている中、俺は口が滑った。
「なんで、美雪さんは嬉しそうなんだ?」
「ふぇぇ!?あぁぁいや…そう見えてました?」
小さい悲鳴を上げて、俺から離れた。
いけない、失言をしてしまったらしい。
俺も質問をどう返せばいいかわからなくなってしまった。
「さぁ…?」
と、てきとうに咄嗟に返した。
そんな話をしながら、図書室に着いた。
俺はもう一つ質問が生まれた。
「美雪さんは何を図書室で調べるんですか。」
「あーそれは、後でね。」
なにか隠しているような感じだった。
俺が考えている間に美雪は図書室の何処かに行ってしまっていた。
そして俺も、探し物を探した。
俺のなりたい職業かぁ。
一応、なりたい職業はお花屋さんだ。
実家は、花屋さんを営んでいるからそうしよう。
今でもまだ間に合うはずだ。
俺は、花屋についての本を取ってきた。
フラワーデザインについての本、植物の図鑑、店の管理についての本…
俺はその本を持って机のある所に向かった。
そこで俺は美雪を見つけた。
俺は、美雪の隣に座った。
「あの。さっき調べようとしてたことって…」
「あぁ、あれね。あのね、ちょっと..つらい話になるんだけどね。」
「まって、辛いならいいよ。ごめん。」
「ううん。逆に話した方が少し気が楽になると思って。それでね私、中学校まで幼馴染がいたんだけど、突然いなくなっちゃったんだよね。」
「…そうなんだ。でもなんでその子を探そうと思ったの?まさか、好きだったからとか?」
「違います!ちゃんとした約束が…あ。いや、何でもないです。まあでも、好きだったと私は思っています。」
美雪は少し真面目そうな顔をして喋ったが、コイバナのところは何か楽しそうな顔だった。
みんな好きな人はいる。
しかし、俺にはいない。
恋をするというのはどの様な感情を持つのか、自分でも分からない。
「さあ、調べものをするよ。ほら、早くしないと夕方になるよ。」
新聞を見ながら小さな声で話しかけた。
「オッケ。」
伸ばし棒をつけずに返事をし、本を読み始め、ノートに書き写した。
二、三時間くらい経った頃、俺の調べものは終わった。 - 14 : 2023/06/23(金) 19:23:08.186 ID:UhFmQiBW0
- 美雪は隣で小説を読んでいた。
「あの…すみません。なんか待たせました?」
「え?まあ、待っていたは、待っていたけどね(笑)。」
「先に大学に戻っててよかったですけど。」
「いいじゃん。別に。」
ちょっとしれっとした顔で新聞と本を片付けていた。
俺も調べものを本棚に片づける準備をした。
そして、美雪も俺も片付けが終わり図書室から出た。
サークル部屋に戻るとき、俺はもう一度聞いてみた。
「そういえば、結局なにをしらべていましたか?」
「え?だから行方不明の友達を探してたんですけど…」
「それなんですけど、俺も手伝ってだっていいですか。」
「え、本当ですか!?」
「まあ、花屋は特に重要な資格は無いらしいし。お花の事とかは、他の時間でも調べられるし、結局は暇になっちゃうもんで…」
俺は美雪の方に顔を向けた。
美雪の顔は涙目になりながら、少しうれしそうな顔をして俺の方に振り向いて、言った。
「ありがとう。」
その時の笑顔は忘れることはないほどの、嬉しそうな顔だった。
だが俺は逆に恥ずかしすぎて、真顔でこう言った。
「別に。」
そして彼女の顔には涙が浮かんでいた。
だが彼女は気づいてない様子だった。
「急にどうした。泣いてるの?」
「え?私、泣いてるの。なんで。」
「…なんでですかね?昔、同じ事が一度あり、その思い出と連動したのではないでしょうか?いわゆるデジャブというやつですかね。」
予想している中、美雪は強く胸のあたりを握りしめていた。
そんな話をしている間にサークル部屋に戻ってきた。
そして、部屋に入ると先輩たちのあいさつが聞こえ、俺は言森さんに伝えた。
「あの、調べものが一応全部終わったので、美雪さんの方を手伝いたいのですがよろしいでしょうか。」
「え?もう 調べものが終わったの。まあ…いいんじゃない、一緒に調べて。そのほうが美雪さんも嬉しいと思うし。」
本を読みながらテキトウそうな言葉で返してきた。
まあ、許可も貰ったし美雪にも伝えに行くか。
そして、美雪にも伝えた。
美雪は俺に感謝の言葉をくれた。
今日は、時間の流れが早く感じた。
皆は帰る支度を始め、俺も支度を始めた。 - 15 : 2023/06/23(金) 19:24:26.287 ID:UhFmQiBW0
- 俺は、自分のアパートにいる。
朝方、家でパジャマの姿でベットの上で本を読んでいると、携帯電話が鳴った。
俺はため息をつきながら、携帯電話を片手にとり電話に出た。
相手は俺の父さんだった。
「もしもし。どうしたの。」
「ああ、爽太。今どこにいる?」
「え、アパートにいるけど。」
「今祖父がそっちに行ってるから、待っててね。」
「はぁ?なんで?」
「なんか、食べ物とか色々持ってくるらしいよ。あと、誕生日でしょ。」
「余計なお世話なんだけど…まあ、わかったよ。待ってるから。」
「そろそろ、つくと思うから外で待って案内してやって。」
「はいはい」
「ツーーーーー」
と父さんとの会話は終わった。
それにしてもいきなり俺の家に来るのはさすがに焦った。
父さんも少しは気を使って欲しい。
あと、余計なお世話だ。
俺は子供ではない
そんなことを思いながら。外に出る支度をしていた。
外に出て、家の前の道路の道路脇で待っていた。
しばらくしたら、父さんの車が来た。
車からおじいさんが降りてきた。
「久しぶりだな。爽太」
「お久しぶりです。」
何年ぶりかのおじいさんの声を聞いた。
「爽太。色々持ってきたぞ。」
後部座席から段ボールを三つ出しながらいった。
俺はその段ボールを部屋に運ぼうとした。
おじいさんも手伝った。
俺はおじいさんに質問した。
「なんで、父さんは事前に連絡しなかったんですかね。」
「爽太は、どうせ暇だから別にいいんじゃないと言っておったぞ。」
「まったく本当に父さんは…。」
少々呆れた。
話をしながら、部屋についた。
「またカギをしないで、部屋を出たのかい。」
「あ、ごめんなさい。昔からの癖で。」
「まだまだ子供だな(笑)。」
「余計ですその言葉。」
ちょっとすねた。
でも、この癖を直さないとダメなのは分かっている。
おじいさんを部屋に入れドアをちゃんと閉めた。
そして、段ボールを一緒に開けた。
そこには発泡スチロール箱が入っており、開けるとドライアイスと中くらいのチャック袋に入っている冷凍餃子があった。
そう、お母さんの手作り餃子だ。
しかもタッパーにパンパンになるほど入っており、それが4つも入っていた。
嬉しい反面少し多すぎではと苦笑いした。
もう一つの箱には、俺の小さい頃に貰ったものなどが入っていた。
とても懐かしい。
卒業式のアルバムや、小さいころの写真などが色々と入っていた。
「懐かしいなあ。爽太が昔優しいころを思い出すね〜。」
おじいさんが昔の俺のことを話した。
「俺、今そんなに優しくないですか?」
「ん?ああ、昔よりは大人っぽくなってるぞ。い・ち・お・う。」
でも、確かに最近人に対してちょっとあたりが強い気がする。
これも直さないといけないと思った。
最後の段ボールはおじいさんが開けていた。 - 16 : 2023/06/23(金) 19:24:46.441 ID:UhFmQiBW0
- 「はい、これ。栽培キットだよ。」
「本当ですか?ちょうど欲しかったんです!
感謝です!」
「そうかい?どうせ暇だろうから持ってきたけど欲しかったならよかった。」
「暇ではりません!」
少々気が楽になった。
まあ、これでお花を育てる研究ができる。
「そうだ、種を持ってきたぞ。一応2種類かあるから、育てたいものを育てていいぞ。季節とかはちゃんと見て育てろよ。」
「そんぐらいわかってますよ、おじいさん。」
おじいさんから小さいポリバックを渡された。
小さいポリバックには名前が書いてあった。
「ストロベリーキャンドル」「チョコレートコスモス」の種だ。
名前にはいろんな意味で全て俺の嫌な記憶がある。
ストロベリーキャンドルは、女子の友達と小学校から家に帰る時、道端に咲いていたストロベリーキャンドルを本物のイチゴと勘違いし食べてしまった事。
チョコレートコスモスは、確か小学校低学年の頃同じ教室の女子が校舎裏でバレンタインチョコを俺に渡そうとしたが、俺はチョコが嫌いで貰うことを断り続けたら泣きながらビンタを一枚食らった。
ここまでくるとお父さんは俺のことを遠まわしで揶揄ってるのではと思い込んでしまう。
一応おじいさんに聞いてみた。
「おじいさん。これ、狙いました?」
「何がだい?」
真顔で答えてきて、本当に知らないような反応だった。
まあ、おじいさんが知ってるわけないよな。
「そうだ。忘れてた!」
おじいさんはいきなり大声で叫びだし玄関へ走り出した。
「どうしたの、おじいさん!?」
「そういえば、車に忘れ物しとった。部屋で待っといて。」
「わ、わかった。」
おじいさんはドアを開け部屋から出た。
そしておじいさんは、すぐに戻ってきて苗木を持ってきた。
俺はおじいさんに問いかけた。
「それは苗木?」
「これかい?これは今から育てられる植物だぞ。」
「名前は?」
「バタースコッチというバラの植物だよ。」
でた、食べ物の名前の植物。
一応、バタースコッチにも嫌な思い出がある。
友達の家でお菓子として出されたが俺は初めてバタースコッチというのを食べたためそのバターの味が濃すぎて「不味い」と友達のお母さんの目の前で言ってしまい、恥をかかせてしまった。
いい加減にしてくれ。
そして種の袋は勉強の教材で散らばっている机に置いた。
「そろそろ家に戻らないと時間が遅くなってしまう。すまんな。もう帰る時間だ。」
「もうそんな時間か。今日はありがとうございました。」
「いいってことよ。ゴホッ…」
会話が終わった後、おじいさんはドアを開けアパートから出た。
休みの日としては久しぶりで退屈ではない日だった。 - 19 : 2023/06/23(金) 19:26:27.846 ID:UhFmQiBW0
- 今日は日曜日。
時間は朝。
目覚めたのは、朝6時。
俺は家に常備してあるカップラーメンをお湯に注ぎ、3分間待って、ラーメンをすすった。
布団を片付け私服に着替えた。
早速チョコレートコスモスを植えて水を与えた。
そして、カバンに花の図鑑、教科書、小説を入れズボンには財布を入れて6時30分頃家を出た。
そして、俺は右手に携帯電話を持ちランニング程度で走った。
自分でも不思議に思う。
俺はなぜかわざわざ美雪さんの約束のためにサークルへ行くことになった。
そして、10分程度走ったら駅の近くにあるカフェに着いた。
カフェで俺はアイスコーヒーを飲み携帯をいじった。
飲み終わったら、またランニングをして大学に着いた
そろそろ、暑い時期になって来る頃で汗が少し出るようになってきた。
あと、俺はランニングをするのはとてもきつい。
やはり、昔の後遺症が残っているからだろうか。
リハビリ当時は、ちょっと走っただけでめまいがして倒れた。
でも、ずっと走っていると少しは慣れてくるものだ。
8時頃大学に着いた。
廊下を歩き、部屋に向かい扉を開けた。
「こんにちは。」
冷たい風が吹いて来た。
「さっむ!」
「よお、爽太元気か。」
「あの、樋先輩。この時期に冷房は流石に早くないですか。」
「え〜暑いからいいじゃん。なあ、皆」
その質問には、浜宮先輩、渡辺先輩、言森先輩3人が頷いた。
「ほらね。皆、暑いんだよ。」
「わかりましたよ。すみません。」
そんなことを言いながら、カバンを置いた。
そして、ソファーに腰を下ろして携帯をいじった。
数分経った後に、ドアがまた開いた。
「こんにちは。」
そう、美雪が来たのだ
「こんにちは。」
先輩たちも挨拶を返した。
俺は、携帯をしまいソファーに座りながら尋ねた。
「美雪さん。今日は何か調べることありますか?」
「う〜ん…一応あるから図書室に行きましょう。」
「じゃあ、行きましょう。」
俺はバックを再び肩にかけ部屋から出た。
美雪も部屋から出た。
廊下を歩いて、俺は美雪に問いかけた。
「今日はどんなことを調べるんだ。」
「実は…あまり調べることはないんだ。」
「え?じゃあ、なんで図書室なんて行くんです。」
「…..」
美雪は黙りっぱなしで歩き続け外に出た。
俺はもう一度美雪に問いかけた。
「あの、美雪さん。どこへ…。」
俺が美雪に問いかけてる最中に美雪が喋った。
「爽太さん!今から街でデートしましょう!!」
「は?」
急に、「デート」と言われ俺は思考が停止し、
足が棒になった。
突っ立ってる俺の右手を強引に引っ張り、俺が登校する反対側に走り出した。 - 20 : 2023/06/23(金) 19:27:14.736 ID:UhFmQiBW0
- 「あの、デートって…。」
「勘違いはしないでね。デートはデートでも、ただ街を観光するだけなんだから。ほーら、走って!」
美雪はにこやかな顔で前を向いて手を繋ぎながら走っていた。
歩道橋の階段を駆け上がり、真っすぐになっている床版の所も走った。
階段を下るところで手を放してくれた。
そこで俺は、美雪の隣まで走るペースを上げた。
「美雪さん。君って、走るの速いんですね。」
「別に。」
走りながら話し、少し息切れし始めた。
「そういえば、この先に何かあるんです?」
「え、知らないの?」
「知らない。」
「まあ。行けばわかるよ。」
話していると洋風な建物に灯台のような物がついてる消防署の前にある交差点が見えた。
信号の青表示が点滅し始めた。
「美雪さんこの交差点渡ろう。」
俺はそう言い、美雪と俺は全力でダッシュした。
信号が赤になった。
俺らはギリギリ渡りきれた。
「はぁはぁ…なんで俺らは走らなきゃいけないんだよ。」
文句を口にしながら、質問した。
「はぁはぁ…ただの気分です…」
「気分かよ。」
美雪は毎回気まぐれで行動する。
そして、俺らは走るのをやめ歩くことにした。
美雪は胸らへんを抑えながら歩き、数分黙りっぱなしだった。
歩いているうちに、並木と石垣が道の周りに見え始めた。
そして、道は坂になっていた。
ここで、美雪は俺に声を掛けてきた。
「ねえ爽太さん。」
「はい。」
「爽太さんには、なんか思い出とかないの?ほら!例えば高校とか中学とか?」
「特にないかな。」
「そんなぁ。絶対一つぐらいあるでしょ。修学旅行とか、まあ他色々。」
「修学旅行に行った記憶はありますけど、思い出が…ない。」
「なんでよ?」
「俺は、中学の頃に大きな事故に遭って、記憶が少し飛んでるんだ。多分印象深い思い出的な物かな。」
「そうなんだ…それは、なんか聞いてはいけない事だったかな。ごめんね。」
「別にそこまで気にしている事でもないし、大丈夫ですよ。」
「そう?それならよかった。」
そして、ポケットからメモ帳みたいなのを取り出し、メモをしだした。
そう、前に図書室へ行った時と同じだった。
「なにしてるの、それ。」
「え、別にちょっとした考え事をしただけ。」
「そう…。」
話をしていたら、交差点にたどり着いた。
信号が青になり俺らは歩道橋を渡った。
真っすぐに歩き、曲がり角を曲がった。
その先には駅が見えた。
駅につながる階段の所まで着き、階段を上り改札まで来た。
俺は美雪に問いかけた。
「駅に来たかったのか。」
「そんな事だけで来るわけないでしょ!」
美雪は改札に、ICカードをかざし駅のホームへ行こうとした。
俺も続いて、改札にICカードをかざし美雪に着いて行った。
電車が来るのを待ち、電車が来たところで俺らは電車に乗った。
俺と美雪は座る席がなかったため、吊り革を持って立った。
少し時間が経ち目的地に着いた。 - 21 : 2023/06/23(金) 19:27:46.213 ID:UhFmQiBW0
- 「到着!」
美雪は駅の外で叫んだ。
「ここで何をするんだ。」
「桜を見るの。」
「そろそろ夏の頃なんだから、流石に咲いてないと思うよ。」
「そうなの?それなら早く言ってよ!」
「教えてくれなかったじゃないですか。」
ちょっとした、コントで話を進めた。
「でも、実際に行かないとわからないでしょ?」
そう言って、脇道の方へ向かい少しだけ階段を登って行った。
俺も付いて行った。
少し進んだら大きな道が出てきた。
そこは谷中霊園という墓地で、道端に木がいくつも並んでいた。
しかし、ここは墓地であった。
「今度は桜じゃなくてお墓参りかい?」
「不謹慎みたいなことを言わないの。別にお墓参りしに来たわけじゃないけど。」
俺は馬鹿だな、いつも空気が読めない。
「あれ?ここのはずだったけど。」
桜の木を美雪は探していた。
「今はもう葉っぱが青茂っていますね。」
そう、桜の木は全て緑の葉っぱで青茂っていた。
「あ! 見て爽太さん。あそこに一つだけ桜の花が咲いているよ!」
「一つじゃなくて、一輪ですよ。」
「ごめんごめん(笑)。」
ツッコミを入れて少し笑わせた。
「あ、花びらが一枚落ちちゃったよ。」
風が吹いた。
落ちたのはしょうがないことだ。
だけど、最後の一輪と思うと可哀そうにも思える。
「桜…さくら…….」
俺は、「桜」と口にして不思議と涙が落ちた。
「どうしたの!?いきなり泣いちゃって。」
美雪は俺を心配して聞いてきた。
「え?俺、今泣いているのか。」
「そうだよ。ほら、私のハンカチを貸すから拭いて。それよりどうしちゃったのいきなり。私みたいに昔のことでも思い出したの?」
「ありがとう…」
涙を拭いてる途中少し気になる事を耳にし質問をしたが、美雪はそれを隠すかのようにしらばっくれた。
すると、また風が吹いた。
風はすぐに吹き終わったが、先ほど見ていた木に咲いていた桜の花が散った。
ひらひらと4片落ちてきた。
俺は、落ちてくる桜の花びらを拾い、手の平にある桜を眺めた。
眺めていると、美雪が話し掛けて来た。
「ほらもう一つの花びらだよ。」
と、もう1枚の桜の花びらを俺にくれた。
そして、美雪は言った。
「これで、離れた花びらも再会したね。」
俺はその言葉を聞いて、思わず微笑で笑顔を見せた。
「そう…ですね!」
「あ! 爽太さんが笑顔を見せた!?珍しいね。」
そんな会話をして、青茂っている木々の中を俺らは歩いた。
最後の一輪が散り、春は終わった。
そして、冷房の風が部屋に日常的に吹き始める時期の始まりでもあった。 - 22 : 2023/06/23(金) 19:28:47.644 ID:C8BsNGp70
- グェー長井ンゴーw
読めないンゴーw
- 26 : 2023/06/23(金) 19:33:50.168 ID:UhFmQiBW0
- >>22
ゴメンゴーw - 23 : 2023/06/23(金) 19:31:14.292 ID:UhFmQiBW0
- 青茂っている木々の中を歩き終わると、建物が見え始めた。
俺らはそこで引き返して駅に戻った。
「どうするの?桜は今、青茂っちゃったし…他に行く場所とかあるの?」
俺は美雪に質問をし、提案を掛けた。
「ここの近くに、下町があるらしいけど行ってみます?」
「あれ?やけに積極的じゃん。本当のデートだと思ってるのかなぁ?」
美雪は俺を揶揄うように話しかけ、にやけ始めた。
しかし、否定はできない。
あそこの、桜の事を思い出せば俺に取ってはとても印象的な事であった。
そこで、俺は美雪の事を気にし始めた。
けど、俺は美雪の態度に少し苛立ち怒りっぽい口調で否定した。
「別に。」
「じゃあ、やっぱり帰ろうかなぁ?」
「美雪さんはそもそも街でブラつくのを付き合って欲しいんじゃなかったの?」
「そ、そうだけど。でも、君が街をブラブラするのに付き合う気がないなら行かないよぉ。」
ここで俺と美雪は一つの対立が生まれた。
美雪は俺が行く気がないなら、行かない。
俺はそもそもの提案を受け入れている事を前提にしている。
俺は、携帯を出し街にある店を調べた。
そこで一つ、ふと俺の頭から提案が思い浮かんだ。 - 24 : 2023/06/23(金) 19:32:38.142 ID:UhFmQiBW0
- 「美雪さんって、パンがお好きですか?」
「好きだけど…」
「あそこにパン屋さんがあるとおもうのですが、行くなら奢ってあげますよ。」
「何?その上から目線。」
少し調子に乗って、美雪に距離を少し離れられた。
「奢ってくれるなら行ってやってもいいよ。」
俺の口調を真似しながら、上から目線で話した。
「…」
「ぷ(笑)」
俺と美雪は同時に微笑した。
「さっきはすみませんでした。」
「別にいいよ。こちらこそごめんって(笑)。」
俺らは少し笑顔を見せて気軽に謝りあった。
「じゃあ行ってみようよ。そこに。」
美雪はそう言い出して、また俺の手を掴んで走り出そうとした。
俺は美雪を一旦止めた。
「下町が何処だか知ってるの。」
「あ。」
やはり、気まぐれに動く人だ。
そして彼女は、天然である事に今更気づく。
俺は彼女を手を掴まずに、エスコートさせた。
駅にあるパンフレットを取り、下町の店を探しながら歩いた。
駅から出て大きな道を真っ直ぐ行くと、下町に着いた。
目に見えたのは下町の入り口のアーチだった。
「ここなの〜?」
そう言って、美雪は階段を降りていった。
俺も続き、降りていった。
俺と美雪はアーチを潜り抜け真っ直ぐ歩いた。
周りには商店街のように、いろんな店がいくつも並んでいた。
「ねえ。そのパン屋は何処にあるの?」
「もうちょっと先だよ。」
「そういえば、そこのパン屋さんはどのパンがおすすめかな?わかる?」
「いや、まだ行った事がないからわからないな。」
この話の答えはすぐにわかる事になる。 - 25 : 2023/06/23(金) 19:33:06.197 ID:UhFmQiBW0
- 「着いたぞ。ここだ。」
「なんか雰囲気が良い店だね。」
美雪と俺は、店の前で隣同士になり店のパンを外で眺めていた。
そこで美雪は、体制は変えずに俺に質問をしてきた。
「爽太さん?なんで、私がパンが好きな事を知ってたの?」
「だって、給食の時におかわり…」
声はだんだん小さくして、少し考えた
そう、俺は何も考えずに返答をし、不思議な事を話していた。
「爽太さん?」
美雪は細かく観察するような目で俺を見つめていた。
「何か知ってるの?私の事」
「え…まあ…うん、多分。」
「一応言っとくけど、私と爽太さんは同じ学校なんだからね。」
「…え?」
「私も実は昔、事故が遭って…」
俺はその話を聞いた瞬間、体からとんでもない寒気がした。
そう、鳥肌が立っていた。
「でも、事故に遭った時の事や中学校の事とか少ししか覚えてなくて…」
「へー…」
「どうしたのぉ、また涙が出てるよ。」
「え…」
その言葉に驚き、美雪から目線を外しパン屋の反射している鏡の部分を見た。
そこには、泣いてる姿は見えなかった。
しかし、目のところに手を翳すと涙で濡れていた。
毎回美雪の過去の話を聞くと涙が出てくる。
「もう、せっかくパン屋に来たのに思い出泣き?泣かれると、空気が悪いじゃないの。もう…」
彼女はちょっと怒りっぽく最後には呆れられた。
「ほら、パン屋に入ろ!」
美雪は店のドアを開け、「チリん」っと店の鐘が鳴った。
相変わらず美雪は空気が読めない天然女…いや、そんな悪い言い方はやめよう。
ただ彼女は、自分の過去を話しただけ。
俺の気持ちが彼女の言葉から影響を受けていたからだ。
このような、考え方は昔は無かったはず。
でも、一つ何かが影響を受けたのは間違いない事だ。
周りの景色はよくわからないが「桜」という言葉で桜が満開になっている所が思い浮かぶ。
いわゆるデジャブというやつなのだろうか?
そのような事はともかく、美雪の言う通り、自分からパン屋へ行くと言う話をしていたのに、これだと来た意味もない。
そして、俺もパン屋へ入った。 - 27 : 2023/06/23(金) 19:34:56.596 ID:UhFmQiBW0
- パン屋には、数少ないパンが置いてあったが、そのパンは多くあるようにも見えた。
「ねえ。ここのパン屋さん、全部美味しそう!全部食べたいなぁ!」
美雪の顔はイメージ的に、目をキラキラして犬のようにベロを出してるように見えたが、実際は違う。
俺らがパンを見ている時、靴の音が近づいてくるような音がした。
「いらっしゃい。」
店から男性の店員さんが現れて来た。
「すみません。あの、ここのおすすめのパンはありますか?」
美雪は店員さんに声を掛けた。
「ん〜…全部自慢のパンだけどね(笑)」
「それは失礼しました。」
「食パンはおすすめだけど…」
店員さんは食パンをおすすめをしてきたが、俺にはまだ食パンという魅力がわからなかった。
「でも、食パンは見当たらないのですが?どこにあるのでしょうか?」
そういえばパンを見てて食パンは見当たらなかった。
「ああ、先程売れ切れちゃってね。」
「そうなんですか。」
「ごめんね。」
店員さんは謝って来たが仕方がない事だ。
物事は上手く行く事は必ずしもないからな。
「でしたら、今売っている中でおすすめのパンはありますでしょうか。」
「フランスパンはどうかな?長いフランスパンもあれば、丸型のフランスパンもあるよ。」
美雪はその言葉を聞き、トングでパンを取った。
美雪が取ったのは、丸いフランスパン2つと小さいピザ1つだった。
「では、お会計お願いします。」
「はいよ。」
美雪はお会計を小銭で渡して支払いは終わった。
そして、俺と美雪は外に出た。
「はい。これ食べていいよ。」
「え。」
美雪は先程買った丸いフランスパンを差し出してくれた。
俺はパンを手に持ち美雪に話しかけようとしたところ、美雪はパンを食べていた。
そして、美雪は真っすぐ歩き始めた。
「美雪さん。俺、あまり好きじゃないんだよねフランスパン。」
「ふわぁんで?(なんで?)」
中から湯気が出てきているパンを口に頬張りながら俺に質問を返してきた。
「ほらフランスパンって固くて、食べた時、食いちぎるときの弾力みたいなのがあまり….
。」
俺は文句を言った。
けど、美雪が一々買ってもらった食べ物。
そして、俺にわざわざくれた。
流石にこれはわがままを言ってしまった。
「じゃあ、いいよ。(プイ)」や「なに、私からもらったパンに文句あるの?さては、恥ずかしがってるなぁ~。」など揶揄われる図が俺の頭の妄想の中から見えてきた。
だが、実際は違った。 - 28 : 2023/06/23(金) 19:35:56.517 ID:UhFmQiBW0
- 「そんなことないよ。ここのフランスパンはね、外はカリカリのせんべいみたいで、中はふかふかなんだよ!実はさっき店員さんから焼きたてに変えて貰ったんだよ。」
「そう…なのか?じゃあ、いただきます。」
俺はパンを頬張った。
食べて驚いた。
美雪の言う通り、中はふわふわで外は弾力があるものではなくカリカリしていた。
これには、驚いた。
俺が昔から食べているパンは、パン屋さんで焼きたてから時間が経ったと思われるパンをトングでお盆に移してパンを買っていた。
中のパンの生地は温かったが、焼き立てではなく保温してある温かさだった。
俺はここで時間の大切さを少し理解した。
「……美味い。」
「でしょ!」
そして、知らず知らずいろんな店を通り過ぎていた。
俺は美雪に突然こう言った。
「揶揄わないの…?」
「え…」
冷たい空気の中、時が止まったように感じた。
俺と美雪は真顔で向き合ったまま車が通り過ぎた。
時計の針が12時を指す前、夏初の太陽に照らされた。
炎天下の中の疲労が汗に変わり雫が地面に落ち、何気ない午前中を迎えた。
そして午後へと時間は一瞬で変わった。 - 29 : 2023/06/23(金) 19:37:55.114 ID:UhFmQiBW0
- やべえこっちに移すのめんどいw
事情知らないやつは、+の方で同じタイトルのやつ見てこい - 30 : 2023/06/23(金) 20:10:27.619 ID:oSYUBm21p
- 長いから2文字にしてくれ
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